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文系自治体職員でもできる!持続可能な地域のつくり方講座 公共施設エネルギー性能の効果は光熱費の削減だけでない(3)

第三の効果は、設備更新費用の縮小です。建物の長寿命化と似ていますが、異なる概念です。例えば、10億円の建設費を要し、10年ごとに1億円、20年ごとにさらに1億円の設備更新費を要する公共施設Aと、12億円の建設費を要し、10年ごとに5千万円、20年ごとにさらに5千万円の設備更新費を要する公共施設Bを仮定しましょう【図表】。Aの60年間のトータルコストは、17億円です。同じ期間のBのトータルコストは、15億5千万円です。このように、公共施設の躯体性能を高め、設備に頼らずにエネルギー性能を高めると、必要な税金は少なくて済みます。

設備は、どのような設備であっても、躯体と比べ物にならないくらい早く消耗します。長寿命で知られるLED照明で約8~10年。高効率の空調・給湯設備で約10年~15年。さらに長寿命の太陽光発電パネルでも20年~40年。太陽光発電で不可欠のパワーコンディショナーは約10年。丁寧にメンテナンスしたとしても、一定の年限がくれば、使えなくなってしまいます。

一方、躯体は丁寧に建設・メンテナンスすれば、数百年間でも使い続けられます。もちろん、メンテナンスしなければ躯体も劣化が進みますが、それは躯体の性能を高めても、高めなくても同じことです。そもそも躯体をメンテナンスしない場合は、エネルギー性能だけでなく、構造の劣化も進みますので、いずれにしても使用できなくなります。

実際、公共施設のエネルギー性能向上で先んじているドイツ政府は、躯体のエネルギー性能を高めることが、設備更新費も抑えることになると認めています。2018年4月17日に東京で開かれた「日独省エネシンポジウム~商業ビル・公共建築物・住宅におけるソリューション」(在日ドイツ商工会議所主催)において、ドイツ連邦政府の建築都市空間開発庁国家機関建築物エネルギー対策コミッショナーは、連邦政府ビルが新しくなるにつれ、躯体性能を高めてきた結果、必要な冷暖房設備が減少し、設備更新費を下げていると報告しています。

日本では、建築技術に比べて設備技術が発展してきたため、公共施設のエネルギー性能強化でも、設備に依存する設計が見られます。LED照明に、高効率空調(エアコン)、高効率給湯器(エコキュート)、太陽光発電パネル、蓄電池(リチウムイオン電池)、それらを制御するBEMS(ビルエネルギーマネジメントシステム)などです。

しかし、設備依存の建物と躯体依存の建物では、計算上のエネルギー性能は同じでも、そのランニングコストが大きく異なってくるのです。ランニングコストは、自治体財政から支出される税金です。定期的な設備更新費を最小化するためにも、躯体のエネルギー性能を高めておく必要があるのです。

【図表】二種類の高エネルギー性能の公共施設(田中信一郎作成)

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