

イノベーション&リノベーションシティをめざすコロラド州デンバー(3) モータリゼーションから公共交通と自転車の街へ変身
デンバーの挑戦は、モータリゼーション社会にも及んでいます。アメリカでの脱モータリゼーションのまちづくりは、オレゴン州ポートランドがよく知られています。ポートランドは、高速道路建設を断念したことをきっかけに、都市の膨張を抑制する政策を立て、公共交通を充実させてきました。これに対し、デンバーは、いったん都市の膨張とモータリゼーションの普及が進んだ後に、脱モータリゼーションへ転換しようとしています。 その中核は、公共交通事業を担うデンバー地域交通局(Regional Transportation District: RTD)です。デンバーは内陸都市で、外から訪れるときの玄関口は、デンバー国際空港となります。こことデンバー中心部のユニオン駅の間は、高速鉄道で結ばれています。空港と都心部が鉄道で直結し、アメリカで珍しく移動の主役となっています。 空港と直結するユニオン駅が、デンバー都市圏の交通ハブになっています。ユニオン駅から近郊の中小都市までは、近郊鉄道や高速バスでつながっています。ユニオン駅は行き止まり構造のため、階段を上り下りする必要なく、空港鉄道か


イノベーション&リノベーションシティをめざすコロラド州デンバー(2) 古い建物のリノベーションと集客施設の立地、街中居住の促進で賑わいを生み出す
デンバーでは、職住分離から職住同所へと、都市計画の考え方を変えつつあります。モータリゼーションの発展したデンバーでは、郊外の住宅地から中心部のオフィス街へ車で通勤するのが当たり前の都市で、行政もそうした都市計画を進めてきました。しかし、近年は、中心部で積極的に集合住宅を整備しています【写真1】。 職住同所による街中居住は、住む人の利便性だけでなく、街の賑わいも高めます。モータリゼーションの盛んな地域で、職住分離が進むと、街中の商業施設や集客施設は、夜間と休日に閑散となります。これら施設は、平日と休日等で集客が異なるため、稼働率(採算性)が低下します。一方、郊外の施設は、平日日中の集客が少ないという問題を抱えています。街中居住が増えれば、施設の集客力は自ずと高まります。 デンバーは、街中居住の促進と合わせて、集客施設の街中立地を進めています。代表的な事例は、メジャーリーグ・ロッキーズのスタジアムです。建設地を郊外にするか、街中にするか議論し、街の賑わいを創出する観点で、ユニオン駅近くの街中に建設されました。 同様に、3つの大学がデンバー市街地に立地


イノベーション&リノベーションシティをめざすコロラド州デンバー(1) イノベーションは科学技術の専売特許でなく、多様な人々の交流が重要
2018年8月、3週間の日程でアメリカ各地を訪ね、エネルギーやイノベーションに関係する機関や専門家からヒアリングして回りました。訪問したのは、ワシントンDC、ボストン、デンバー、サンフランシスコです。アメリカ国務省の International Visitor Leadership Program (IVLP) の一環です。国務省及び関係者の皆さまに心から感謝申し上げます。 持続可能な地域づくりの観点では、コロラド州デンバーの取組みに関心を持ちました。デンバーは、市の人口約60万人、都市圏人口250万人の大都市です。都市圏で見ると、名古屋市に匹敵する規模です。アメリカ中西部に位置する内陸都市で、石油産業の拠点として発展を遂げました。日本との直行便も就航しています。 デンバーの興味深い点は、地域経済政策の最重点事項にイノベーションを掲げ、地域ぐるみで取り組んでいることです。本レポートでは、3回に分けてそれを紹介します。 第一の取組みは、スタートアップウィークです。これは、毎年のある週に、劇場や屋外、オフィスなど、街のあちこちでイノベーションや起業、