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文系自治体職員でもできる!持続可能な地域のつくり方講座 公共施設から始める(6)

  • 田中信一郎
  • 2018年3月24日
  • 読了時間: 2分

第四の事項は、公共施設の寿命です。施設を何年使うかによって、費用対効果や財政への負担は大きく変わってきます。鉄筋コンクリート造でも鉄骨造でも木造でも、手抜きせずに建て、適切にメンテナンスすれば、100年を超えて使用できます。

公共施設を長い期間にわたって使用すれば、原則としてその分だけ持続性を高めることになります。建設の都度に多くのエネルギー・資源を投じることになりますし、建物を除却すれば多くの産業廃棄物が排出されます。財政においても、住民の負担をその分だけ軽くできます。

建物の寿命を伸ばすには、次の5点に留意する必要があります。建物の寿命と聞くと、技術職員の専門的領域で、事務職員の口を出すことでないと思いがちですが、そうではありません。技術職員と事務職員の知見を合わせて、はじめて長寿命化が可能なのです。

第一は、用途変更への対応です。多くの場合、公共施設を含む建物は、用途変更によって所有者・使用者によって除却されます。必ずしも、老朽化によって除却されるわけではありません。財務省研究会における専門家の報告によると、耐久性よりも使い方に問題があるとのことです。

第二は、構造劣化の防止です。建物の耐久性よりも使い方が問題とはいえ、構造が劣化しては元も子もありません。公共施設で一般的な鉄筋コンクリート造では、二酸化炭素に触れることによりコンクリートが中性化し、中の鉄筋を錆びさせることで、構造がもろくなります。防ぐには、コンクリートを塗装被膜や断熱材で覆う必要があります。

第三は、定期的なメンテナンスです。どのような構造であっても、メンテナンスフリーの建物はありません。けれども、自治体で財政難に直面すると、真っ先にカットされやすいのが、公共施設のメンテナンス予算です。メンテナンス費を削っても、公共施設という資産が劣化すれば、財政により大きな打撃となります。

第四は、経年減価概念からの脱却です。税法によって、建物には減価償却の耐用年数が設定されています。鉄筋コンクリート造の事務所であれば、50年です。これは税法上の概念に過ぎず、物理的な耐用年数とは無関係です。混同しないようにしなければなりません。

第五は、長期的な状況変化への対応です。現在の公共施設の大半は、人口増加期に行政需要の増加に対応するため建設されました。しかし、現在は人口減少期で少なくとも今後100年近く続きます。このように、長期的な状況変化を見据えておく必要があります。なかでも、後に説明するパリ協定は、公共施設にとって重要になります。

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