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文系自治体職員でもできる!持続可能な地域のつくり方講座 公共施設エネルギー性能の効果は光熱費の削減だけでない(2)

第二の効果は、建物の長寿命化です。公共施設を長期にわたって使用できれば、その分だけ税金の投入を減らせます。例えば、10億円の建設費を要し、10年ごとに1億円の維持管理費も要する公共施設を仮定しましょう。30年ごとに建て替える場合、60年間のトータルコストは、24億円です。一方、60年ごとに建て替える場合、60年間のトータルコストは15億円です。このように、公共施設を長寿命化するほど、必要な税金は少なくて済みます。

建物はどのような素材であっても劣化は免れず、鉄筋コンクリート造も例外でありません。強アルカリ性のコンクリートは、二酸化炭素に触れることによって、徐々に中性化していきます。中性化が、中の鉄筋にまで及ぶと、鉄筋の表面に形成されている被膜が破壊され、鉄筋が錆び始めます。

鉄筋コンクリートでは、中の鉄筋が錆びると、その強度を維持できなくなります。それには2つの原因があります。一つは、鉄筋の断面が縮小することにより、鉄筋の強度が低下します。もう一つは、錆による体積膨張が内部で圧力を発生させ、周囲のコンクリートの破断・ひび割れに至ると、コンクリートの強度が低下します。すなわち、鉄筋コンクリートとしての構造的な強度を保てず、その建物が使用できなくなるのです。

鉄筋コンクリートの劣化を防ぐ(遅らせる)には、表面を空気に触れさせない必要があります。例えば、ペンキで塗装すれば、鉄筋コンクリートと空気の間に塗装被膜ができるため、劣化を防ぐことができます。一方、塗装には剥がれやすいという弱点があります。とりわけ風雨にさらされると、その弱点は顕著になります。鉄筋コンクリート造のマンションで、15年おきに足場を組み、外壁塗装(大規模修繕)をするのはそのためです。

鉄筋コンクリートの劣化を防ぐもっとも効果的な方法は、断熱材で覆うことです。二酸化炭素と風雨から外壁を守ることに加え、外気の変化による影響も緩和できます。コンクリートは、気温や湿度の変化によってもひび割れを起こすことがあるからです。もちろん、室温を一定範囲にし、空調へのエネルギー投入量を減らすことにもなります。つまり、一石二鳥、三鳥の効果が期待できるのです。

これに対し、日本で人気の外壁へのタイル張りは、公共施設に採用すべきでありません。確かに、外壁からの劣化を防ぐ効果は、断熱材や塗装と同様にあります。けれども、断熱材のように外気の影響緩和やエネルギー効果はありません。一方、塗装に比べれば高価となります。タイル張りの追加的な効果は、見た目にしかないのです。

外壁タイルは、防災や事故防止の観点からも問題です。タイルの剥離・落下の恐れがあるためです。詳しくは、専門コンサルタント「さくら事務所」のサイトをご覧ください。

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