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文系自治体職員でもできる!持続可能な地域のつくり方講座 エネルギー性能の高い公共施設をつくる(6)

公共施設は、地域熱供給の核にもなります。熱供給とは、個々の建物や部屋で冷暖房や給湯の熱源設備(空調や給湯器など)を取り付けて需要を賄うのでなく、センターに熱源設備(ボイラーなど)から冷暖房や給湯の「熱」を配るシステムです。それを敷地の異なる複数の建物間に配ると、地域熱供給となります。日本では地域冷暖房とも呼ばれ、東京・丸の内など大都市の高層ビルが林立する地区の一部で行われているだけですが、ドイツやデンマーク、スウェーデンなどでは多くの都市で一般的に備わっているシステムです。

地域熱供給の魅力は、建物それぞれにボイラーを備えるよりも、エネルギー効率を高められることです。なぜならば、ボイラーは一般的に大型化するほど高効率になるからです。ボイラーは、最大出力で運転しているときにもっとも高効率となるよう設計されているため、需要を調節できれば、高効率での運転時間を長くすることもできます。

ボイラー費用が相対的に安くなることも魅力です。複数の建物で同時にエネルギー消費が最大化する可能性が極めて低いため、それぞれの建物のボイラーの出力合計よりも、小さな出力合計で済みます。その分だけ、10年から20年に1度のボイラー更新費用も安くなります。恒常的に熱を排出する施設(工場や廃棄物焼却施設など)が近くにあれば、そもそもボイラーを設置せず、その排熱を利用することもできます。

近年、注目されている魅力は、再エネの利用しやすさです。センターのボイラーを木質バイオマスなどの再エネに替えれば、一気に面単位の再エネ導入が進むことになります。コジェネにすれば、発電もできます。

問題は、日本のほとんどの都市に熱導管が備わっていないことと、熱導管の敷設費が欧州の5~10倍することです。地域熱供給では、断熱材を厚く巻いた導管に、ボイラーでつくった60~80℃程度の熱水を通して、熱を供給します。需要側では、その熱水をそのまま使うのでなく、熱交換設備で「熱」だけ取り出し、空調や給湯に用います。けれども、国内での事業例が少ないため、関連産業やノウハウが確立していないのです。それが、高コスト構造にもなっています。

そのため、公共施設にボイラーを設置し、近接する別の公共施設に熱供給することが、地域熱供給の「最初の一手」として有効になります。最初から面的な地域熱供給を目指すのでなく、2~3の近接する公共施設だけで行い、ノウハウの蓄積とともに、徐々にそれを拡大していく手法です。公共施設は、年間を通じて安定的に熱需要があり、過去のデータも蓄積されています。そのため、事業の採算も計算しやすいのです。北海道下川町は、公共施設への木質バイオマスボイラー設置から、近接する公共施設への熱供給、そして公営住宅への面的な地域熱供給へと、徐々に拡大していきました。参考となるやり方です。

【図表】北海道下川町の町役場のボイラー。役場庁舎に加え、近接する町民会館や福祉施設にも熱供給している。(田中信一郎撮影)

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