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地域経済を取り巻く3つの課題

第一の課題である人口減少は、地域経済を縮小させる方向で、強い圧力をかけてきます。もっとも大きい影響は、人口減少に伴う域内需要の縮小です。一人当たりの年間消費・投資額が同じであれば、人口の減少に比例して経済が縮小します。また、ブログ「民需と官需で人手の奪い合い」で示したように、労働力の不足に伴う生産力の縮小も懸念されます、一人当たりの労働生産性が同じであれば、労働力の減少に比例して経済が縮小します。

第二の課題は、供給過剰・需要過少の構造の常態化です。これまで、人々はお金を手にすると、何らかのモノに換えました。家を建てたり、クルマを買ったり、テレビ・オーディオなどの家電を購入したりと、自らの周りをモノで埋めてきました。ところが、現在は既に欲しいモノを持っているため、お金を使わず、貯め込むようになっています。そのため、モノを供給する能力が、モノを欲しいと思う人々の意欲(需要)よりも上回ってしまい、それが当たり前となりました。既に大半の人が、生活必需品と一定の嗜好品を周りに揃えていますので、かつての高度経済成長期と異なり、これから再び、需要が大きく増加することは考えにくい状況にあります。

これは、デフレーション(デフレ)が構造化していることを意味します。デフレは、モノの価値よりもお金の価値の方が高い状態で、その結果として、物価や賃金が下がっていきます。物価の下落によって賃金が抑えられ、明日もらえる賃金が今日もらえる賃金と比べて上がらないと思えば、人々はモノを買い控え、それがモノを作っている人の賃金に反映され、さらにモノを買い控えるという循環に陥ります。この循環が、デフレスパイラルと呼ばれます。これにより、経済は縮小していきます。

第三の課題は、集中型から分散型への技術革新の転換です。産業革命以来、技術革新は社会の集中・統合を促し、それが集中型の技術を促進してきました。例えば、石炭の利用には、炭鉱の運営、船舶・鉄道による輸送、工場での利用、大量生産製品の販売と、それぞれの段階で巨額の資本と労働者の動員、その管理が必要でした。石炭から石油へとエネルギー源が変わると、その流れはさらに強まり、原子力では国家の関与を必要とするほどになりました。それは、メディアでも同様で、新聞からラジオ、テレビと発信側が大資本となっていき、情報量も膨大になっていきました。それが、インターネットや再生可能エネルギーという分散型技術の急速な発展により、急速に逆転しつつあります。それは、従来型の産業が陳腐化しつつあることを意味します。

地域経済は、これら3つの課題に適応できないでいます。依然として、人口増加期の産業形態・経営思考のまま、デフレを一時的な苦境と捉え、域外の大企業からのトリクルダウンに期待しています。それでは、そのうち行き詰まることが避けられません。必要なことは、3つの課題を認識し、真正面から地域経済の改革に取り組むことです。起死回生の一発逆転を狙うのでなく、地道な取組が求められます。

【図表】日本のGDPデフレーターの推移(1980~2017年)(「世界経済のネタ帳」より)

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