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人口減少でも医療費・介護費は増加し続ける

人口減少といっても、すべての年代が均等に減少するわけではありません。図表のとおり、日本の人口ピークは2008年でしたが、65歳以上の人口ピークは2040年と推計されています。2016年の65歳以上の人口は3,459万人で、2040年には3,920万人まで増加すると見込まれています。また、医療・介護需要の増す75歳以上の人口は、2016年の1,691万人が、ピークの2055年には2,446万人まで増加する見込みです。なお、これらの推計は現状のまま推移した場合で、様々な対策の効果は見込んでいません。

これは、医療費・介護費が当面の間、国全体で増加し続けることを意味しています。これは、年齢が高くなるほど、医療・介護を受けるリスクが増加するためで、その人口増加に比例して、医療費・介護費は増加します。実際、年金を含む社会保障給付費は、人口ピークの2008年以降も増加を続け、過去最高額を毎年、更新しています。現状のままでは、これが少なくとも2040年頃まで続くわけです。

ただし、高齢化率の伸びほど、それが上昇するわけではありません。高齢化率は、あくまで人口全体に占める高齢者の割合であって、医療費・介護費とは無関係です。医療費・介護費は「高齢者の年齢別人口」と「年齢別の一人当たり費用」の掛け算で決まります。「高齢化白書」では「現役世代1.3人で1人の高齢者を支える社会の到来」と示されていますが、こうした表現に惑わされて思考停止すると、具体的な政策を考えられなくなります。政策立案では、高齢化率でなく、具体の人数を見ることが極めて重要です。

医療費・介護費を抑制するならば、一人当たり費用を抑制するしかありません。高齢者人口を人為的に減らせないためです。もちろん、少子化対策や移民政策によって現役世代をいくら増やしても、高齢者の医療費・介護費は減りません。

費用抑制といっても、医療・介護の利用ハードルを上げることは、無意味です。医療・介護サービスを必要とする人が、その利用を控えれば、確かに費用を抑制できますが、医療・介護サービスが必要な状態はそのままだからです。その結果は、余命・健康寿命の低下、介護離職の増加、生活環境の悪化などと、異なる社会課題になって現れるだけです。受診等を控えて、重篤化してから病院に担ぎ込まれれば、かえって医療費等を増やすことにもなりかねません。それらの社会課題を無視して、あくまで費用抑制の観点から医療・介護の利用ハードルを上げるとすれば、課題を解決し、社会を進歩させるという政策の前提を覆すことになりますので、政府・与党は「社会課題を放置し、社会を退歩させる」ということについて、国民に信を問う必要があるでしょう。

それでは、人口減少社会における医療費・介護費をどのように考えればいいのでしょうか。すぐにでも解決策を探りたいところですが、それを考察する前に、大都市と地方の違いについて見ることにします。

【図表】高齢化の推移と将来推計(内閣府「平成29年版高齢社会白書」)

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