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人口減少で重要性を増す貧困対策

急激な人口減少が避けられないなかで、生活や経済への悪影響を緩和するために、貧困対策がさらに重要となります。一見すると、人口減少と貧困対策がどのように結び付くのか、分かりにくいかも知れません。実際、国の地方創生総合戦略は、貧困対策を人口減少対策に位置付けていません。多くの自治体の地方創生総合戦略も同様です。

極めて重要なことは、人口減少に比例して、地域経済を縮小させないことです。日本経済は、内需中心で動いていて、輸出のGDPに占める割合は15%前後です。地域経済になるほど、内需依存型となります。すると、地域の人口が減少すれば、需要も減少し、経済規模が縮小することになります。経済規模が縮小すれば、市場で供給する住民サービス(金融や医療、小売など)が撤退していきますので、生活レベルが低下します。それは、さらなる人口流出を招くことになります。このスパイラルに陥ってしまえば、脱出は困難です。

人口が減少しても、住民の購買力と購買意欲が上昇すれば、需要は比例して縮小しません。そうなれば、人口が減少しても、住民サービスは維持できます。住民サービスの効率化を併せて図れば、一層効果的です。

貧困対策は、購買意欲は高くても購買力が低い人(消費性向が高い人といいます)に対して、購買力を高めることを目指す政策と位置付けることができます。例えば、年収200万円程度の親1人子1人世帯であれば、生活費や教育費でもっと多くのお金を使う可能性が高いですが、年収が使うお金の上限になっています。もし、年収300万円になっても、貯金はほとんどできず、ほとんどを生活費や教育費に充てざるを得ないでしょう。すると、地域の需要はその分だけ拡大します。一方、年収2千万円の世帯の年収を100万円アップさせても、それは蓄財に回る可能性が高いでしょう。それでは、地域の需要を拡大できません。

日本の貧困率は、高い状況にあります。それだけ、購買力を高める余地があるといえ、貧困対策が地方創生に効果的といえます。図表は、貧困率の推移です。相対的貧困率(所得の中央値の半額に満たない人の割合)は15.6%、子どもの貧困率は13.9%です。ひとり親世帯の貧困率は約50%にも達します。しかも、貧困線(所得の中央値の半額)は年収122万円です。そもそも、中央値の年収245万円の世帯が絶対的な貧困状態にあります。これは中央値(サンプル世帯を年収の多さで順番に並べたときの真ん中の世帯)ですので、半数の世帯が年収245万円以下であることを示しています。

つまり、人口減少下における貧困対策は、貧困世帯のみならず、社会全体にメリットの及ぶ効果的な政策なのです。自治体としては、それを貧困対策として計画的に対応することに加え、地方創生総合戦略や総合計画、経済政策のなかで重要な政策として位置づけ、最重点で取り組む必要があります。

【図表】貧困率の年次推移(厚生労働省「平成28年国民生活基礎調査の概況」)

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