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「人口増加を目指す道」と「人口減少を認める道」

日本は、明治以降の人口増加期が終わり、人口減少期に入ったところです。図をご覧ください。ピークの人口は江戸時代と比べ、約4倍まで急増しています。今後の人口は、急減していくと予測されています。

人口増加は、これまで社会運営の大前提となっていました。戦前は海外に人口のはけ口を求め、最終的にアジア・太平洋戦争の敗北に至りました。戦後は国内経済の発展と貿易によって人口増加に適応し、世界第2位の経済大国となりました。その結果、経済構造、社会保障制度、社会資本など、あらゆる社会システムと政策が人口増加と経済成長を前提とするようになりました。

現在は、人口増加と経済成長を前提とした社会運営が惰性のように続いています。政府は、経済の低成長を一時的な状態と認識し、金融緩和、財政出動、規制緩和と、かつての経済政策をフル動員しています。経済界の一部には、海外から移民を受け入れ、人口増加を図るべきとの意見もあります。

つまり、人口増加と経済成長に再び転換し、従来の社会運営を継続するのか、人口減少と経済成熟を受け入れ、それらを前提とした社会運営に転換するのか、岐路に立っています。現在の政府と経済界は、少なくとも経済政策については前者を選択しようとしています。一方、後者の意見もあり得るのですが、政治・経済では大きな流れになっていません。

自治体は、政府の地方創生政策によって、岐路に立っていることを半ば強制的に認識させられました。すべての自治体が、長期にわたる「人口ビジョン」を策定し、人口減少の現実と直面することになったためです。

しかし、どちらの道を進むのか、はっきり自覚して選択している自治体は少ないようです。婚活支援と移住促進で、人口のV字回復や維持が可能と考えている自治体も少なくありません。

重要なことは、人口減少を受け入れるとすれば、社会システムを抜本的に見直し、それに適応させる取組が必要になるということです。人口減少は税収減少を意味しますので、それでも安心して暮らせる社会にするためです。人口や企業が増えることを前提にしていた開発は取りやめ、限りある予算を他のことに使わなければなりません。

抜本的な見直しが求められる社会システムの一部として、自治体行政も例外ではありません。予算や政策はもちろんのこと、職員の能力も変えることが求められます。

さて、わたしたちはどちらの道を選択すべきなのでしょうか。

【図表】日本の長期人口の推移と想定(国土交通省「国土の長期展望」)

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