文系自治体職員でもできる!持続可能な地域のつくり方講座 エネルギー性能の高い公共施設をつくる(4)
ZEB/ZEB Nearly概念を超えて、真に持続的なエネルギー性能の高い公共施設を設計するためには、設計プロセスを基本設計の仕様書で指定することが必要になります。「この手順で設計し、その手順を踏んだことを客観的に示せるようにしてください」と、自治体が仕様書で指定すれば、設計者はそのとおりに設計します。仕様書は、担当の技術職員だけで決めるものでなく、必ず庁内会議や決裁を経ます。そのときに、設計プロセスを入れ込むのです。
指定するプロセスは「予算度外視で究極の高いエネルギー性能の建物をいったん設計した後、予算額に達するまで、費用対効果の低い設計・設備から引き算すること」です。発注者が後で検証できるよう、その計算ロジックも示せるよう、あわせて指定します。また、費用対効果には、設備更新と維持管理の費用も含めさせます。当然ながら、仕様書に供用予定年数を入れることも必要です。
これにより、予算の範囲内で得られる最高性能で、かつランニングコストも抑制できる施設になります。疑義があれば、設計者からデータと金額で説明してもらえますし、設計への要望事項についても、定量的に検討できます。基本設計が決定した後、議会や住民に対しても、データと金額で設計の合理性を説明できます。詳細設計は、基本設計の範囲内で行われるので、後はそのとおりに行われているかチェックすれば事足ります。
もちろん、新築だけでなく、エネルギー性能の向上を目的とした大規模改修においても有用です。設計者は、仕様書の範囲内で仕事をしますので、新築でも改修でも自治体の作成する仕様書が肝心なのです。
この方法であれば、建築・エネルギーの専門的な知識を持たない首長や事務職員であっても、公共施設のエネルギー性能を本質的に向上させられます。これまで、公共施設のエネルギー性能については、申し訳程度の太陽光発電設備の設置やLED照明への切り替えなど、個別具体の設備導入の是非で語られて(お茶を濁されて)きましたが、それを脱却できます。技術職員にとっても、技術的な観点からすれば非合理的となる設備の設置を求められるのと異なり、納得して仕事できます。
そして、自治体でもっともこの方法を取り入れて欲しいのは、財政担当部局です。財政担当は、どこの自治体でも事務職員が主力となっています。財政担当は、どうしても建設時の予算額(イニシャルコスト)を抑えることに目が向きがちで、後年度の負担(ランニングコスト)は後回しになりがちです。一方、イニシャルコストが合理的なのか、ランニングコストをどうやって抑えるのか、チェックするための専門的知識を有していません。この方法であれば、それらを金額でチェックできます。