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インフラの取捨選択には熟議と合意形成が不可欠

インフラの取捨選択は、地域社会を存続させる上で、避けて通れない道です。人口減少に合わせて、維持すべきインフラを減量しなければ、インフラが使えなくなるか、インフラコストに潰れてしまうかのどちらかです。いずれにしても、住民生活と地域経済を圧迫します。

一方で、一部の人にインフラ不備のしわ寄せや移転の強制をするわけにもいきません。これまで生活することが認められていた地域で、突然それを禁止するのは、人命にかかわる危険のない限り、認められるものでないからです。それに、どれだけ不便であっても、人は住み慣れた場所を離れがたいものです。当事者の意思に反して、強引に移転させることは、人倫にも反します。

インフラの取捨選択には、地域住民の間での熟議と合意形成に基づくことが不可欠です。一つ一つ問題を共有し、議論を積み重ね、納得を得ていくのです。遠回りのように思えますが、これ以上の早道はありません。熟議と合意形成をバイパスすると、禍根が残り、別の地域課題を引き起こすだけです。

まずは、インフラに関する情報を共有する必要があります。稼働率、維持管理コスト、他の施設との比較、代替手法など、自治体にとって出しにくい情報であっても、分かりやすく出していくことが求められます。

次に、インフラについての地域住民の声を丹念に聞くことです。そこに住み続けたいと願う人の思いをしっかり受け止め、対話の前提とすることで、自治体の考えも聞いてもらえます。一方的な「ご説明」は逆効果です。

また、対話の場を粘り強く続けることが重要です。もし議論を早めたいならば、対話の回数や時間を増やすことで対応し、強引に締め切りを設定すべきでありません。

そして、住民の生活環境がさらに改善する構想を提示する必要があります。住民間に対立を持ち込むのでなく、住民同士の関係がさらに深まる地域を構想し、生活の利便性が向上するものでなければなりません。

インフラを縮小しながら、住民の生活環境を改善させる手法は、ドイツのショートウェイシティ(移動距離の短い都市)の考え方に学ぶことができます。住民の移動先の選択肢を拡大することは、住民の生活環境の改善に直結します。

ショートウェイシティについては、自治体関係者必読の良書があります。村上敦さんの『ドイツのコンパクトシティはなぜ成功するのか』(学芸出版社)です。ご一読を!

【図表】村上敦『ドイツのコンパクトシティはなぜ成功するのか~近距離移動が地方都市を活性化する』(学芸出版社)

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