人口減少でインフラ維持が困難になる
2000年代まで(もしかしたら今でも)、人口増加を前提としたインフラ整備を続けてきたため、維持すべきインフラが膨大な量になっています。既に人口減少となっていますので、一人当たり維持すべきインフラが毎年、増加し続けています。
整備したインフラは、次第に老朽化していくため、維持費と更新費が欠かせません。国土交通省の予測によると、現在のインフラを維持・更新するだけでも、2030年には現在の2倍の費用が必要になります。現在、約10兆円のその費用は、2030年には15兆円を超える見込みです。実際には、2010年のこの予測後も、八ッ場ダムに代表されるように、新規のインフラ整備が続いていますので、さらに膨れ上がる見込みです。
そして、その費用は自治体財政を直撃します。【図表1】のように、2030年頃には現在のインフラ関係予算と同額レベルに達しますので、新規整備を取りやめても予算が足りなくなります。人口減少に伴って税収が減少していくと、2030年よりも早期に予算が足りなくなるおそれがあります。
要するに、インフラの新規建設はおろか、現在のインフラすら維持困難になる事態が目前に迫っています。自治体の選択肢は、インフラを取捨選択するか、医療福祉など他の予算を削減するか、増税するか、さらに借金するかと、いずれも住民に苦難を強いるものしかありません。
しかも、その費用は地域によって異なります。人口の少ない地域ほど、負担が大きくなる見込みです。【図表2】は、都道府県当たりの維持更新費の見通しで、一人当たりインフラ(ストック額)が多い県ほど、維持更新費が高くなります。
国土の均衡ある発展を目指してインフラ整備を進めつつも、それが効果をあげなかった地域ほど、負担に苦しむ構図です。2010年現在は、都道府県の間でそれほどの差がありませんが、2030年にはその差が開いています。2030年で負担の大きい県は、島根県、秋田県、岩手県、北海道、新潟県となっています。最大の島根県(年約30万円)と最小の東京都(年約10万円)では、3倍もの開きがあります。
一般的に、インフラの建設費は国から手厚く補助金・交付金の手当てがされますが、維持更新費は国から手当てされません(交付金での加算算定はあります)。そのため、負担はほぼそのまま住民にのしかかってきます。
したがって、維持更新費を考慮せずにインフラ整備を進めれば、長期的に住民や企業を苦しめることになります。国は、全国の自治体にインフラ維持更新の長期計画の策定を求めていますが、厳しい見通しを踏まえた真剣な議論を行っているでしょうか。
【図表1】インフラの維持管理・更新費の将来見通し(国土交通省「国土の長期展望中間報告」)
【図表2】都道府県別人口と人口一人当たりストック額と維持更新費の推移(国土交通省「国土の長期展望中間報告」)