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たばこ税の健康保険財源化

循環器系疾患は、典型的な生活習慣病で、人々の生活状況を改善することで予防できます。効果的な予防方法で確立されているのは、禁煙(たばこを吸わないこと)、減塩(塩分を取り過ぎないこと)、運動です。国立循環器病研究センターによると、睡眠の質の改善やストレスの緩和など、様々な生活習慣の改善が予防につながります。

そのため、多くの自治体では生活習慣の改善を住民に呼びかけています。なかには、住民や医療機関との協働で、草の根の取組を続け、循環器系疾患の減少を実現した地域もあります。代表的な事例としては、長野県における食生活改善運動があります。保健師、栄養士、住民たちが全県で減塩運動を繰り広げ、循環器系疾患を減らしてきました。

ところが、自治体が今一つ積極的に踏み込みにくい分野が、禁煙です。健康の観点からは、たばこが「百害あって一利なし」であると明白です。それにも関わらず、これまで多くの自治体は喫煙の抑制にちゅうちょしてきました。少なくとも、減塩や運動、検診の啓発や促進に比べ、消極的な取組になってきました。オリンピック・パラリンピック東京大会のような「外圧」がなければ、今でも議論は低調だったことでしょう。

自治体が禁煙に消極的であるのは、たばこ税が主要な財源になっているためです。現在、たばこの値段のうち、63%が税になっています。その値段のうち、3.9%が道府県たばこ税、23.9%が市町村たばこ税となっていて、購入地の自治体税収となります。それらを合わせた地方たばこ税は、年間約1兆円の税収となり、地方税収全体の2.8%を占めています。そのため、住民全員が禁煙してしまうと、それを失うことになってしまいます。

たばこ税の税収は、国も地方も一般財源に組み入れられます。一般財源というのは、使途の縛りがなく、教育から借金返済まで、裁量で使途を決められる財源のことです。恒常的に財源が不足している自治体にとっては、地域課題の解決に使える貴重な財源ということになります。ちなみに、使途が決められているのは、特定財源と呼ばれます。

そこで、循環器系疾患の抑制と自治体財政の両立を図る必要があります。自治体の財源を維持しつつ、喫煙者の減少が自治体財政に影響しないようにするのです。単にたばこ税をなくすだけでは、自治体の自主財源が失われ、課題解決能力も低下してしまうためです。

一つの方策は、たばこ税を全額、健康保険財源に繰り入れ、それと同額、国・自治体の健康保険の負担を減らすことです。たばこ税は、国・地方の総額で約2兆円ありますので、2兆円分の健康保険負担金を減らすのです。喫煙者の減少で税収が減少しても、健康保険の支払可能性も比例して減少します。その作用を利用して、たばこ税をさらに値上げし、喫煙者を意図的に減らすことも考えられます。そして自治体は、健康保険の負担額を減らし、その分を新たな財源とすることになります。

【図表】2015年度のたばこ税の内訳(日本たばこ産業株式会社ホームページ)

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