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医療費・介護費を圧迫する循環器系疾患

自治体経営の観点から医療・介護を見ると、サービス利用者数が将来にわたって一定で推移することが望ましい状態になります。利用者が増加する見込みであれば、施設を建設し、医師などの従事者を確保しなければなりません。利用者が減少する見込みであれば、既存施設の稼働率が低下し、施設経営を脅かします。医療・介護施設は一定の利用者を前提とするため、それを下回れば施設を廃止するか、公的支援を拠出するか、選択が迫られます。

問題は、多くの自治体にとって、望ましい状態に程遠いことです。自治体が恐れるのは、短期・中期的に利用者が増加する傾向で、その後に減少する傾向になることです。当面の対応をするためには、施設を新たに建設しなければなりませんが、その投資回収を完了する前に、利用者が減少してしまうという事態です。残念ながら、たいていの自治体の高齢者数は、こうした増加の後に減少という予測になっています。

医療費・介護費の大幅な増加を防ぐには、高齢者数の増加期に施設建設を抑制し、減少期に稼働率を高めることが必要です。後者は、それほど難しくありません。子ども、高齢者、障がい者などとタテ割りになっている施設機能を集約して効率を高めて、サービスをユニバーサルに充実させつつ、老朽化に合わせて施設や機能をゆっくりとダウンサイジングすればいいのです。問題は前者です。住民の切実なニーズがあるにもかかわらず、それを拒否することは困難です。

そこで必要になるのは、医療・介護のニーズそのものを縮小することです。高齢者数が増加したとしても、健康な高齢者数の割合が高まり、医療・介護サービスの利用者が一定になれば、投資回収の見込めない施設を建設する必要はありません。自治体財政を医療費・介護費が今以上に圧迫することもありません。

医療費をもっとも圧迫しているニーズ、すなわち病気は、循環器系疾患です。血管の詰まりに伴う病気で、心筋梗塞や脳梗塞が代表的です。2015年の死亡率で見ると、心疾患(15.2%)と脳血管疾患(8.7%)を足し合わせた循環器系疾患(23.9%)は、がん(悪性新生物)(28.7%)に次ぐ、第2位の死因になっています。

循環器系疾患の特徴は、医療費が高額なことです。図表は、病気ごとに1人当たりで見た医療費です。循環器系疾患が他の病気より高額で、とりわけ後期高齢者医療で見ると、がんなど他の主要な病気よりも3倍近く高額になっています。死亡率のとおり、患者数も多いため、総額で見ても、循環器系疾患が最大の医療費になっています。

循環器系疾患は、介護費も圧迫しています。介護が必要になる原因でもっとも多いのが、循環器系疾患だからです。「高齢社会白書」(図1-2-3-8)によると、21.9%の人が循環器系疾患を原因として最大で、認知症を原因とする16.4%を上回っています。

【図表】疾病分類別1人当たり医療費の全国と長野県の比較(長野県「信州保健医療総合計画」)

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