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国際比較でも労働生産性が低い日本

労働生産性の低さは、日本全体に共通する課題です。政府は「働き方」の問題と位置付けて改善を図っていますが、裏を返せば「経営」の問題です。経営者が、ビジネスモデルと業務効率の改善に長けていないため、従業者の「働き方」が悪いのです。従業者は「働き方」や「業務の量と質」を自由に決められず、経営者がそれを決めています。

日本の労働生産性の低さは、国際比較で示されています。図表をご覧ください。左図表は、労働者1人当たりのOECD諸国間での比較で、日本は22位です。非効率的な経済で財政破たんしたギリシャより低い労働生産性です。右図表は、労働時間当たりの比較で、日本は20位です。サービス残業が横行しているにもかかわらず、長い昼休憩(シエスタ)で知られるスペインより低い労働生産性です。サービス残業分を参入したら、もっと順位が下がるでしょう。いずれにしても、サミットに集まる先進7か国(G7)でもっとも低いのです。

労働生産性を上げるには、より短い労働時間で、より稼ぐ経営をしなければなりません。そのためには、従業者の自発的な創意工夫を引き出し、様々なレベルでイノベーションを起こしていく必要があります。それには、従業者を教育訓練し、賃金と待遇を改善し、休暇を十分に与え、社内の風通しを良くし、多様な従業者が多様な意見を表出できるようにすることが条件になります。

日本の経営者は、労働生産性を上げようと努力しているでしょうか。少なくとも、結果として表れていないことは、国際比較から明確です。従業者の学ぶ機会を設けず、賃金と待遇を劣悪なままにし、有給休暇を認めず、サービス残業を押し付け、上意下達の社風で、中高年の男性だらけならば、労働生産性は下がる一方です。様々なレベルでのイノベーションが起きにくく、ビジネスモデルと業務効率が改善しないためです。

地域の人手不足、特にサービス業などでの人手不足を解消するには、地域の経営者の能力を高める必要があります。問題は「働き方」でなく「働かせ方」にあるのです。それによって労働生産性を改善し、賃金と待遇を向上させ、あるいは負担を軽減させ、人手を確保するしか、方法はありません。ただでさえ、人口減少で総数として人手が減っていくからです。かつてのように「代わりはいくらでもいる」という発想で従業者に接していては、遅かれ早かれ経営は行き詰まるでしょう。

そこで、自治体の経済政策として、経営者の能力を高める政策を検討する必要があります。地域の経営者が能力を高めようとしても、多くの地域ではそれが難しいためです。例えば、高度な経営能力を身につけようとすれば、MBA(経営学修士)を取得することが考えられますが、取得できる大学院は大都市に偏っています。異業種交流会に参加しても、イノベーティブな参加者(大都市では珍しくない参加者)がいて、刺激を受けられるとは限りません。多くの自治体で前例のない政策になりますが、人口減少期に必要な政策です。

【図表】労働生産性の国際比較(日本生産性本部「労働生産性の国際比較2016年版」)

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