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「人口増加を目指す道」は現実的か?

日本の進路は、大きな岐路に立っています。人口増加と経済成長に再び転換し、従来の社会運営を継続するのか、それとも人口減少と経済成熟を受け入れ、それらを前提とした社会運営に転換するのか。どちらを選択するかによって、あらゆる政策が変わってきます。

ただ、その前に「人口増加」という選択の実現可能性を見てみましょう。人口予測は、様々な将来予測のなかでもっとも手堅い予測です。合計特殊出生率のように変数もありますが、急激に大きな変化をしめすことはないと、経験則で明らかになっています。

政府は、ベストシナリオであっても、国の人口が長期的に減少すると予測しています(図表参照)。出生率が、2030年に希望出生率(国民の婚姻・出産の希望がすべて実現した場合の出生率)の1.8になり、2040年に人口置換水準の出生率(出生数と死亡数がほぼ同じになった場合の出生率)の2.07になっても、当面の急激な人口減少は避けられません。2070~2080年頃になって、減少カーブがやっと緩やかになり、2100年頃から9千万人程度の人口で定常化します。それでも、現状のまま低い出生率で推移すれば、2060年に約9千万人、2100年頃には約4千万人まで減少すると予測されています。

つまり、楽観的なベストシナリオであっても、当面(50~60年)の間、国全体で急激な人口減少が避けられません。行政の政策でもっとも長期的なものは、気候変動政策やエネルギー政策ですが、それでも2050年が長期目標の年になっています。政策やプログラムの裏付けがない長期目標であっても、2100年です。ということは、政府や自治体で企画・執行する政策の前提としては「急激な人口減少」しかありえません。

海外からの移民受入によって、人口を維持・増加させることも非現実的です。海外からの移民を受け入れるにしても、2060年までに2千万人を受け入れて、ようやく現状の人口レベルを維持できる程度です。毎年50万人の移民を受け入れると、2060年には国民の6人に1人が、海外からの移民になる計算です。ちなみに、アメリカンセンターJAPANによると、アメリカではこれまで約5千万人の移民を受け入れ、現在でも年間約70万人の移民を受け入れているとのことです。日本の国民数はアメリカの約半分ですから、移民の規模感でいえば、移民国家のアメリカを上回るペースで移民を受け入れることになります。それでも、現状レベルの維持がせいぜいです。

移民受入で人口を維持・増加させるということは、アメリカのような移民国家を急激なスピードで目指すという、国家戦略の大転換を意味するわけです。現状では、シリア等からの難民の受入れですら、政府は消極的です。法務省の発表によると、2016年度の難民申請者10,901人のうち、認定数は28人、在留許可数は97人に過ぎませんでした。

要するに、岐路に立っているとしても「人口増加を目指す道」は、非現実的なのです。

【図表】日本の人口推移と長期的な見通し(内閣官房「まち・ひと・しごと創生長期ビジョン・総合戦略パンフレット」)

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